脳科学から見える「もの創り」
茂木さんと知名オーディオの出会いから、「もの創り」に対する想いなど、対談形式で掲載しています。
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茂木健一郎
脳科学者。ソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー。
「クオリア」(感覚の持つ質感)をキーワードとして脳と心の関係を研究するとともに、文芸評論、美術評論にも取り組んでいる。2005年、『脳と仮想』にて第四回小林秀雄賞を受賞。2009年、『今、ここからすべての場所へ』にて第12回桑原武夫学芸賞を受賞。 -
知名宏師
知名御多出横(知名オーディオ)創業者。
1980年代の頃。アンプというと、コードなどをハンダづけしているのが一般的だったが、ハンダをなくすことで、音のひずみを取り除き、より生の音に近いクリアな音を再現。目の前で実際にアーティストが演奏しているかのような音質が楽しめるアンプ&スピーカーの開発者。 -
宮島真一
タレント。1973年沖縄市出身
ベイキャントストアー・ピクチャーズ代表
TV・ラジオ・イベント企画、司会など幅広く活躍中。
2014年に沖縄市ちゃんぷるー大使に選ばれる。
現在、沖縄映画界を広げるカフェシアターのオーナー。挑戦を止めない三児の父!
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今回視聴した 知名オーディオ スピーカー&アンプ (8cm パイプスピーカー10W×2 溶接アンプ)
沖縄から世界へ発信する唯一無二の極上サウンド 「世界に通用するスピーカー」で「本物の音」を!
茂木さんと知名オーディオの出会い
- 宮島:
- 僕は、茂木さんが知名さんのオーディオと出合ったときのことを鮮明に覚えていますよ。数年前のとあるイベント会場でした。知名さんのスピーカーを見た茂木さんは、どこから音が鳴っているのかと驚かれて、きょろきょろとされていましたよね。
- 茂木:
- スピーカーとして思い浮かべる形と明らかに違っていたので驚きました。音がクリアで歪みがなく、生演奏を聴いているような感覚になったのを覚えています。 知名オーディオのスピーカーは音がいいだけではなく見た目もきれいですよね。昔から合理的なものは美しい形をしている。突き詰めた結果、この円筒形という美しい形になったんですね。知名さんのスピーカーを見た茂木さんは、どこから音が鳴っているのかと驚かれて、きょろきょろとされていましたよね。
- 知名:
- これ以上には、シンプルには作れない、というところまで突き詰めた結果、今の形となりました。
- 茂木:
- 見ための美しさを追求した結果ではなく、良い音を出そうと工夫を積み重ねた結果、自然とこの形に行き着いたんですね。
- 宮島:
- 僕の中のスピーカーのイメージは、前向きに音が出るタイプですが、知名さんのスピーカーは上方向に向いてますね。
- 知名:
- 普通は、前に向けたくなるでしょう。しかし、前向きのスピーカーは、ステレオには使えないというのが、僕の持論です。水面に豆を落とすと波紋が広がりますよね。それと同じように音を拡散させるには、上方向に向けなくてはいけません。通常のスピーカーの高音特性は約10度の広がりしかない。ところが本物のシンバルの音は360度、どこからでも聴こえます。それを再現するためには、全方位の音の広がりを持つ、パイプ型スピーカーがベストである、という結論に至りました。
- 茂木:
- オーディオマニアの人の家に行くと、「ここら辺で聴くと一番良く聴こえますよ」とか言われることがあります。音が聴きやすい場所を探さないといけない。でも知名さんのスピーカーは、部屋のどこにいてもいい音が聴くことができるということなんですね。
知名さんの音へのこだわり
- 宮島:
- そもそも、知名さんがスピーカーを作ろうと思ったきっかけは何だったのでしょうか。
- 知名:
- 15年ほど前に、お客さんの要望で海沿いに立つレストランの音響システムを設置したことがきっかけです。その施設に音響を取り付けたところ、カウンター席で音が聴こえないというクレームを受けてしまいました。 調べてみると、天井から床に向かう高音すべてを絨毯が吸ってしまい、ミキサーで高音をいっぱいに上げても音量不足でした。建物が海岸に面し、フロアが横に広がっているため、高音を真横に送る必要がありました。そこで、口径51ミリの高音用スピーカーを3分の1ずつ面積で割って、それぞれ右、左、中央へと振り分けることで、無事全体に音が行き渡るようになりました。しかし、設置した途端、逆に高音が強く出過ぎてしまい、絞ってやっとバランスが取れるほどでした。そのことから、「音の指向性と音量は完全に別の問題だ」ということに気付きました。その出来事は目からうろこ。このことがきっかけとなり、360度の全指向性を実現したスピーカーの仕組みを考え付きました。あのとき逃げてしまっていたら、何もできなかったと思います。
- 茂木:
- 音楽を楽しむ上で、特に高音は大事ですね。2万ヘルツ以上は内耳では聴き取れない代わりに、 身体で感じとることができる、ということを証明された研究者がいます。CDは残念ながら2万ヘルツ以上の音をカットしてしまっていますが。
- 知名:
- CDは2万ヘルツまでの情報を記録していますが、2万ヘルツを再現できる音響システムはありません。知名オーディオのスピーカーでは、2万ヘルツの高音を出すことにこだわりを持っています。いつでも抜けの良い再生音が出せるように、すべてのスピーカーにヒーターを取り付け、常にコーン紙を乾燥させるようにしています。また音の歪みの原因でもあるハンダ付けは行わず、同じ素材の銅で溶接することで、音の歪みを解消する努力をしています。
- 茂木:
- レコーディングというのは、生音を保存するというのが本来の意味ですよね。知名さんの話しを聞いて、「なるほどなぁ」と思ったのは、音は再現できて当たり前なんだけど、現状は、再現できていないところで満足してしまっている、ということなんですね。このスピーカーは奇をてらったことをやっているわけではなく、生音を再現するという、むしろまっとうなことをやっている。歌手なんですよ。女性の歌をこのスピーカーで聴いたら色っぽく聴こえるんでしょうね。話は少しずれますが、実は英語も高い周波数が大切だという説があります。ネイティブな生の英語を知名オーディオで聴いて練習すれば、英語が上達するかもしれませんね。
- 宮島:
- それはいいですね。音楽だけではなく言葉も正確に聴き取れるとしたら、動物の鳴き声なんかもこのスピーカーで聴いたらいいかもしれませんね。
- 知名:
- 鳥の囀りが入ったCDをかけたことがありますが、その音に反応して、本物の鳥が飛んできたことがありましたよ。
- 茂木:
- 鳥もだまされちゃったんですね。女性ボーカルの曲を掛けていたら、なんか宮島君もだまされて入ってきそうだなぁ。女の子いるのって?
- 宮島:
- 中の町のスナックの入り口に置いてあるといいかもしれませんね(笑)
知名オーディオのスピーカーは胎教にも良い?
- 宮島:
- 知名さんのスピーカーでいい音を子供のころから聴いていたら、いい耳の持ち主になってしまうのかなぁ。
- 知名:
- 先日、9ヶ月になる妊婦の方がお店に来ました。僕のスピーカーで音楽を聴かせてあげたところ、お腹の子供が反応していましたね。
- 宮島:
- 音が、胎児までに伝わるというのはすごいことですね。
- 茂木:
- 大人よりも胎児のほうが分かるんですよ。動物は音の良さにリアルに反応します。大人の中にもこの“動物”はいますが、大人になるとどうしても言葉で理解してしまいます。「さすがストラディバリウスの音」だよね、と言っているわりには、耳で聴いていなかったりします。胎児は知恵が無い代わりに、動物のように生で反応します。
- 宮島:
- ストレートに脳に入ってくるわけですね。
- 知名:
- 人間の脳は無限だと思いますよ。
- 茂木:
- 無限を引き出すには知性と感性を教育することが大事ですが、感性の教育を形にするのは難しい。しかし、同じ音楽を聴いても、知名さんのスピーカーと、他のスピーカーの音では、子供の脳は全く違う反応していると思います。沖縄に来ていつも思うのは、沖縄はこの感覚の部分を大事にしているにように思えます。
- 知名:
- 沖縄はレストランにジュークボックスがあったりして、子供の頃から音楽が自然と耳に入ってきます。それがいい影響を与えているのかもしれません。
作る楽しさを沖縄の子供たちに伝えたい
- 茂木:
- 沖縄で第2、第3の知名さんを輩出するにはどうしたらいいですか。
- 知名:
- まずはいい音を聴かないとダメですね。
- 茂木:
- 聴くこともそうですが、作るということに興味をもってくれたらいいですね。あ、ここで、発明家と普通の人とを比較するいい方法があります。普通の人は、ストラディバリウスの音やモナリザの絵を鑑賞したときに、「すごいですね」、と感動して終わってしまいます。 しかし、発明家向きの人は 「作ってみよう」という発想が生まれます。これはものすごく大きな差なんですよね。作ろうと思えるかどうか。知名さんのような考え方を沖縄の子供たちに植え付けていきたいですね。
- 宮島:
- 沖縄市には知名さん以外にも、多彩な発明家がいますよ。現在沖縄市の地域ブランド「コザスター」に認定された商品が、知名オーディオを含めて、ちんすこう、ソース、バッグなど7種類があります。作ってみようと思える子供が増えていけば、「コザスター」の商品もどんどん増えていきますね。
- 茂木:
- まずはコザ詣でして、知名さんの所に行ってもらわないと。
- 知名:
- どうしたら積極的にできるかです。できないと思ったらできないけど、できると思えば何でもできますよ。
- 茂木:
- 知名さんと話していると、知名さんの思考の中の、氷山の頭の部分しか我々には見えないように思えます。水面下でまた何かやっているんじゃないですか。今後の知名さんの野望は何ですか。
- 知名:
- 最近は垂直に飛ばせるラジコンの飛行機を開発しました。バイオリンの名器として知られる「ストラディバリウス」を再現することも目標のひとつです。
- 茂木:
- え、ちょっと巻き戻していいですか。知名さん、次は、「ストラディバリウス」を作るんですか。
- 知名:
- やらなければいけない。やらないとバイオリニストがかわいそうですよ。
一同爆笑